祖父と私と絵画のはなし

画家であり、祖父である佐藤徹のブログ。アートのこと中心です。

商売としての絵画

佐藤徹はあまり商才がないというか、少なくとも商売に興味がある画家とは言えませんでした。むしろ売れる絵を描くなと自らに戒めて、絵を描いていました。

 

でも、それなら売れる傾向の絵を描いたらイラスト、売れない傾向の絵を描いたらアートになるんでしょうか?祖父の絵でざっくばらんに言えば、明るい絵は売れる、暗い絵は売れないということかしら。確かにそう考えると、売れる絵ばかりではつまらないというのは私の好みとは一致してきますが、まあ難しいことはよく分かりません。

 

お金を出すほうからしたら多くの方がよほどのお金持ちでない限り、一生に何回買えるか分からないという一大決心をして、なくても別に生活には困らないというお買い物をするんだもんなあ。その絵が暗くて、せっかく玄関に飾ってみてやっぱり玄関が暗くなったら、がっかりするだろうし。

でもピカソの絵を購入したけど、なんだかよく分からない暗い絵だったらどうなるんだろう?やっぱりがっかりするんだろうか。私は自分で油絵を漫然と描いてる中でときどきそんなことを考えてしまいます。

 

そういえば以前にロックシンガーの矢沢永吉さんが、詳細は忘れましたが、ダウンロードできる文化は大したものじゃないみたいなことを言っていて、なるほどと思いました。矢沢さんといえばライブパフォーマンスが有名で、全国の(主にヤンキーっぽい?)方々が熱く集結するライブですよね。確かにライブの映像をいくら無料でダウンロードしても、カラオケ程度に曲を耳コピしたいならともかく、その場の臨場感や聞こえてくる音って違うもんなあと思いました。

絵画もその場に行って観てみないと本当にいい絵かどうか分からないと思うのです。まあ、ぱっと見で判断されがちなので、絵をじっくり観てもらいたい側からするとがっかりすることが多いのですが。

 

昔、祖父が文部大臣奨励賞をもらったときの絵は、“夢街道”というタイトルの南仏ニースの絵なのですが、そのときの絵はどこへやったの?と聞いたら

「あんなものとっくに燃やした」

と言っておりました。勿体無いと思うのは私だけではない筈だと思います…。

その賞だけで売れると思うのですが、へそ曲がりな祖父でした。当時まだ私は学生で、子ども心にもいい絵に見えたのですが。