祖父と私と絵画のはなし

画家であり、祖父である佐藤徹のブログ。アートのこと中心です。

来年の予定

来年は絵の撮影と処分の年にしようと思います。今年は祖父の念願だった地中海展も出来たし、絵にまつわる祖父の遺言はあとはよくない絵の処分くらいで、祖父の思い残したことの90%は達成出来たんじゃないでしょうか。

機会があればどこかで販売を伴わない形で展覧会をやりたいとも思ってますが、私は東京に住んでるのでイマイチ土地勘がありません。静岡アートギャラリーなんかが、雨の日も屋根伝いに行けていいなあと思っていました。けど、今はなくなって静岡市美術館となっていて行ったことがないので、やっぱりよく分からないのですが、敷居が高くなったっぽいですね…。袋井市に適当なところがあればと思って、生前祖父と色々足を運んだのですが、市役所の展示室以外でいいところはなかったです。私は袋井市民じゃないので、市役所は申し込みできないですし。
昔、東京でも展覧会をやったらしいですが、絵を騙し取られたとかなんとか聞き、やっぱり東京は怖いところだと、腰が引けます。

処分する絵は祖父が晩年描いた日本の風景が主になると思います。佐藤徹の日本を描いた風景は残念ながらあまり評価されず、晩年は寂しいものでした。ムーンシスターズさんで日本の風景展をやっても多分、観覧者の足の運びは今ひとつだろうし。。中にはどうしてこの絵が売れなかったんだろう?、DMにも載った絵だったのに、と首を傾げるものもあります。孫の私から観ても、いやらしい話ですがこの絵は売れセンじゃないな…と思うものも、まああるので(でも先日の地中海の展覧会ではその予感が大いに外れたので、私の審美眼は当てになるのか大変不明です)、そういう絵は処分するか、どうしても処分が惜しければ家族や佐藤家の親戚にあげるかして、故人を偲びたいと思ってます。

浜名湖の絵は割と人気があったらしいのですが、私自身は浜名湖の絵は祖父には失礼ながらそれほど…って感じで、長崎の教会か何かを描いた絵はいいなと思ってたのに、世間からの反応は今ひとつだったらしくて、おかしいなあと思いました。
謎の、美術を扱うという団体が、こちらがお金を35万くらい出せばアメリカなどの展覧会に出させてやるという手紙やメールをもらい、私が知ってる事例の一つに選ばれた絵もその長崎の絵だったりします。
ちなみに祖父はそういう手紙はハハハと笑って、ビリビリに引き裂いてました。

それで話を戻すと、浜名湖の湖面の青さは、あの評価されている佐藤ブルーの青でしょうか?私は違うと思います。祖父の南フランスへの憧憬から生み出された産物に過ぎないのではないでしょうか?

実は祖父が80を越えた頃、もう一度2人でフランスへ絵を描きに行かないかと誘ったことがあります。祖父は暫く悩んでいたみたいで、後から長い手紙が私のところに返事が来ました。読んでみると、もうこの歳で薬や検査、また祖父は私に言いませんでしたが、今思えば入院なども起こり得る身だったらしく、そんな遠いところへはもう行けない、との返事でした。

画家の赤堀尚さんもフランスを夢見ながら、歳を重ね、若い頃に比べて不自由な身体で、あの赤いバラの絵を描いたんじゃないだろうか、とありました。画家は多かれ少なかれみんなそのようなものだから、お前が気に病むことはない、気にかけてくれてありがとうーーーとの言葉だったと思います。年老いた祖父に私も今思えば、老いるとか死ぬということが分からず、残酷な申し出をしてしまったのかなあと思います。近親者の死というものを私に初めて教えてくれたのも祖父でした…。

処分して在庫を半分以上減らすつもりでいます。祖父の描いた跡をカッターで切り裂くのは罪のない子どもの首を絞めるくらい辛いです。でも誰かがやらなくてはいけないことなので。

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